August 19, 2016 / 7:36 AM / 3 years ago

アングル:中国の個人投資家を魅了する「ロボ・アドバイザー」

[香港/上海 18日 ロイター] - 北京の銀行では、資金運用の相談に何時間もかかる。営業担当者が膨大な数の投資オプションを紹介してくるからだ。ウンザリしたローレン・マーさんは、スマートフォンのアプリ「Lingji」を使うことにした。これなら、彼女のために、ある範囲の資産・取引を自動的に選んでおいてくれる。

 8月18日、このところ、中国の個人投資家の関心は、ソフトウエアによる投資アドバイス・取引プログラム、いわゆる「ロボ・アドバイザー」に注がれている。写真はそのようなソフトを開発するXuanji社。北京で11日撮影(2016年 ロイター/Thomas Peter)

アプリの使いやすさと健全な投資収益に気をよくして、マーさんは6月に10万元(約150万円)の資金で開始した投資を、20万元増額した。

このところ、マーさんのような中国の個人投資家の関心は、こうしたソフトウエアによる投資アドバイス・取引プログラム、いわゆる「ロボ・アドバイザー」に注がれている。低金利で国内株式市場も低調、不動産価格にも下落圧力がかかる昨今にあって、投資収益を改善するために、手軽に利用できるアドバイスを求めているからだ。

中国で「ロボ・アドバイザー」サービスは登場してまもないが、その運用資産は2020年には6兆元(約90兆4400億円)まで膨れ上がると予想されている。この数字は招商証券の試算によるものだが、最近まで存在しなかった産業の成長ポテンシャルを裏付けている。

もっとも、これも米国の数字に比べれば半分以下にすぎない。コンサルタント会社ATカーニーの試算によれば、中国よりも数年早く「ロボ・アドバイザー」のサービスがスタートした米国では、2020年までにその運用資産が2兆2000億ドル(約220兆3700億円)に達する。

「中国では、中産階級の人たちが苦労している。投資オプションがあまり多くないから」とマーさん。彼女は30歳で、映画会社のライオンズゲート・エンターテインメントで中国における事業開発を担当している。個人投資の収益は3.5%だという。

「投資オプションの選択という点からすると、(ロボ・アドバイザーは)いつもスマホを見ている若者だけでなく、多くの人にとって有益だ」とマーさんは言う。

賛成派によれば、「ロボ・アドバイザー」は、中国のリテール投資市場において切実に必要とされている多角化と秩序という点でも貢献する可能性があるという。これまでの資産運用会社に比べて、より幅広い投資商品に関するアドバイスと取引を低料金で提供するからだ。

近年、株式から不動産、商品先物に至るまで、中国のあらゆる市場で過剰なボラティリティーが生じてきたが、その原因は、個人投資家が洗練されておらず群集心理に動かされているせいだと言われている。彼らはその後の反発によって手痛い打撃を被っている。

<求められるリスク分散>

中国の個人投資家の多くは従来、アドバイザーに払う費用を惜しみ、自分が知っている範囲に執着するあまり、株式であれ不動産であれ、1種類だけの資産に投資を集中させていた。

経済が年10%、あるいはそれ以上のペースで成長している時代には、それでも十分な収益が得られることが多かった。だが、中国経済の減速、不安定な株式市場、通貨安などあらゆる要因が大きな影響を与えたことで、「ロボ・アドバイザー」と、より多角化・カスタマイズされた投資アプローチへの需要が拡大している。

「これら(の要因)はどれも、人々が『たった1種類の資産にだけ投資するのはもう正しいやり方ではないかもしれない』と思い始め、リスク分散を試みる転機になった」と語るのは、以前スタンダード・チャータード銀行およびシティグループに勤務し、現在は「Lingji」システムを開発するXuanji社のCEOを務めるZheng Yudong氏である。

こうしたソフトウエアでは通常、投資家が自分の投資目標やリスク許容度についていくつかの質問に答えると、投資すべき上場投資信託(ETF)またはその他の資産のポートフォリオを選んでくれる。

香港のエイト・セキュリティーズやドイツのギンモンなど「ロボ・アドバイザー」によるサービスを提供する企業が徴収する手数料は、通常、クライアントの運用資産の1%未満だ。これまでの資産運用会社が、高いところでは5%も取るのとは対照的である。

またこうした企業は中国人投資家に対して海外市場への投資という選択肢も提示しており、人民元の下落を懸念する人々にとって魅力を増している。

エイト・セキュリティーズのクライアントは米国のETFを購入することができ、「Lingji」ユーザーは、中国の適格国内機関投資家制度(QDII)に基づき、他社が提供するミューチュアルファンドを通じて米国市場にアクセスできる。

Zheng氏によれば、現在、北京に本拠を置くXuanji社は、国内の大手資産運用会社をターゲットとして自社の「ロボ・アドバイザー」サービスを売り込むことを目指しているという。そうすれば、先方の企業としても独自開発の手間を省いて、自動化されたアドバイスツールを提供できるようになるわけだ。P2P(ピアツーピア)ローンを提供するJimuboxなどとともにPINTECグループに属するXuanjiは、今週にも資産運用会社との最初の契約を発表する予定だという。

<見えてきた課題>

ソフトウエアによる投資アドバイスという中国では生まれたばかりの新サービスは、課題にも直面している。政府による厳しい流動性規制もあれば、規制環境が不安定なために、先日P2Pローン事業者を対象に行われたような政府による取り締りが行われる可能性もある。

上海に本拠を置く金融専門のリサーチ会社、カプロンアジアの創業者であるゼノン・カプロン氏は、「ロボ・アドバイザー市場の潜在的規模は大きく、成長ペースも比較的速い。だが、実際の運用資産は、われわれの感触としてはまだ非常に小さい」と語る。

だが、その急速な成長ぶりは、金融業界にとっては大きな魅力だ。

米国では、ブラックロック(BLK.N)、フィデリティ・インベストメント、チャールズ・シュワブ(SCHW.N)、バンガード・グループなど、従来の資産運用会社が、「ロボ・アドバイザー」の躍進に注目し、独自のサービスを立ち上げるか新興企業を買収している。

アナリストたちは、中国およびアジアの他地域でも似たようなトレンドが生じるだろうと予想している。

「資産運用会社はこれまで非常にうまく自分の利益を守ってきた。手数料は依然としてかなり高いし、(さまざまな投資商品への)アクセスも本来の姿ではない」と語るのは、エイト・セキュリティーズの会長で共同創業者でもあるマティアス・ヘルー氏。「その意味で、ロボ・アドバイザーによる投資の増大は、非常に重要だ」と言う。

(翻訳:エァクレーレン)

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