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コラム

コラム:ブレグジットは「トランプ勝利」の前兆か

[27日 ロイター] - 不吉な予言が色々飛び交っているが、欧州連合(EU)離脱を決めた英国民投票の結果を、11月の米大統領選で共和党候補指名を確実にしたドナルド・トランプ氏が勝利する前兆と見るのは恐らく早計だろう。

 6月27日、不吉な予言が色々飛び交っているが、欧州連合(EU)離脱を決めた英国民投票の結果を、11月の米大統領選で共和党候補指名を確実にしたドナルド・トランプ氏が勝利する前兆と見るのは恐らく早計だろう。写真は2010年5月、英スコットランドで自身が所有するゴルフリゾートの建設地で記者会見をするトランプ氏(2016年 ロイター/David Moir)

まず何よりも、米国と英国は違う。米国では、マイノリティ有権者は今や国全体の3分の1近くを占めるに至っている。一方の英国では、マイノリティはまだ有権者全体のようやく1割を占めるにすぎない。

それでもなお、英国で起きたことと、米国及び大半の西側民主主義国家の状況との間に見いだせる共通点は、見過ごせないものだ。

まず、英国の投票結果を地理的に分析してみよう。これは米国政治を学ぶ学生にはあまりにもお馴染みの図かもしれない。全体を通じて、残留票は、ロンドン、エディンバラ、ベルファスト、カーディフ、グラスゴーといった都市部に最も多い。マンチェスターやリバプールといった、通常ならば離脱支持と考えられる労働者階級が多い脱工業化地帯の都市でさえ例外ではない。

英国の大都市は、小さな町や地方の農村部などと比べて、人種的、民族的にはるかに多様である。いわゆるミレニアル世代が逃げ込む先は都市部なのだ。米国でも同様に、都市部は地方と比べてはるかに多様性に富んでおり、政治的には進歩主義だ。米国で最も人口の多い30都市のうち、現在28都市の市長が民主党である。これは、米国の政党政治の歴史上、最大の不均衡である。

逆に、英米両国で移民に対する最も強い抵抗が見られるのは、実際にはほとんど移民の流入を経験したことのないような、偏狭な地方地域である場合が多い。一般に、こうした地域における世界観は、既存の均質性を保っていくことが前提になっている。

では、世代別の差異はどうか。ある出口調査では、25歳以下の投票者の73%が「残留」に投票しており、その割合は年齢層が上がるにつれて減少していく。対照的に、64歳以上の有権者のうち、「残留」支持者は40%にとどまっている。

「ブレグジット(英国のEU離脱)」における世代間格差は、米大統領選の予備選におけるバーニー・サンダース上院議員対ヒラリー・クリントン前国務長官の構図とほぼ重なる。30歳以下の投票者の約71%がサンダース氏に投票したが、これまた年齢層が高くなるほど支持率は低くなり、65歳以上の投票者では72%がクリントン氏支持となっている。

これらの数字はいずれも、米英両国におけるポピュリストの反乱は一つではなく複数であることを示している。

まず、高齢白人有権者の反乱がある。グローバリゼーションによって、なすすべなく低賃金競争に巻き込まれ、経済的な展望は暗くなった、と考える人たちだ。彼らの多くは、移民や人種的・宗教的マイノリティに対して恐怖と怒りを感じている。自国の物語、国家的な叙事詩における「主人公」としての地位を奪われたという意識がある。

こうした経済的、政治的、社会的な疎外感に、しばしば外国人嫌悪と人種差別とが加わって、米国では「トランプ主義」を、そして英国では移民排斥主義のイギリス独立党を勢いづかせている。

しかし、勢いづいているのは彼らだけではない。

トランプ氏の指名獲得どころか立候補すること自体、まだ本人の他には誰も真剣に考えていなかった頃、いやその何年も前から、共和党員はあたかも、かつて白人至上主義を打ち出した南部の極右政党「ディキシークラット党」が全国で復活したのかと思うような変貌を遂げていた。彼らは移民やマイノリティに敵対的なキャンペーンを繰り広げ、マイノリティの参加縮小を狙った投票制限措置を設けた。

筆者は4年前、トランプ氏ではなくミット・ロムニー氏の選挙運動に関する記事の結論で、共和党の信条はつまるところ、「高齢者で白人であるわれわれの手にこの国を取り戻したい」ということに尽きる、と書いた。現在、それは米英両国の右派ポピュリストのほとんどに共通する信条となっている。

しかし、特に都市部のミレニアル世代の場合、主流派の有識者からは同じく「ポピュリスト的」な不満を抱えていると一括りにされてしまうものの、彼らにとっての政治は右派ポピュリストとは大違いだ。米国における「バーニー親衛隊」と、スペインのポデモスやギリシャのシリザといったヨーロッパの急進左派政党を支持する若者は、右派ポピュリストよりもはるかに容赦なく、金融業界のエリートや政府を糾弾している。

しかし、イギリス独立党やトランプ支持者とは異なり、左派は財政刺激策、労働者の権利、累進課税など、実際にそれぞれの国の窮状を救う可能性のある政策を幅広く支持している(ただしギリシャでは、政権獲得以降のシリザは、債権国や銀行によって当初の自分たちの計画の実施を阻まれている)。

さらに、これらの若年層主体の政党や運動は、人種的、民族的な多様性に寛容というだけでなく、彼ら自身がすでに多様である。だからこそ、移民排斥主義の主張が英国の若年層有権者にアピールする見込みは最初からなかったのだ。

だからこそ、サンダース氏を熱狂的に支持し、まだクリントン氏に投票するなど考えられない状態の若者(その多くは白人だ)に対して民主党が訴えかけるとすれば、移民や、ラテンアメリカ系や、黒人やアジア系の若者に、「トランプ大統領」が彼らの生活に与える(多くの場合は、破滅的な)影響について語ってもらうのが最も効果的だろう。

グローバル化した資本主義、西側政府の経済政策、そして都市生活者や若者を中心としたコスモポリタン主義の拡大から取り残されてしまった、大都市以外の白人の多くが支持する極右ポピュリズムと根深い外国人嫌悪の論調は、ほとんどすべての西側民主主義国家において一定の勢力を持つようになっている。

これがトランプ氏の立候補の追い風となったのは確かだが、それでも、彼をホワイトハウスに送り込むには、恐らくまだ信奉者が足りない。

とはいえ、2008年のグローバル金融危機とその深刻な後遺症は、1929年の大恐慌とその後の混乱同様に、今日の西側諸国の政治を揺るがしている。ブレグジットがその最終章だとはとても思えない。

*筆者は月刊誌「American Prospect」のエグゼクティブエディター。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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