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コラム

コラム:キプロス支援をめぐるロシアの危険な賭け

モスクワを訪れていたキプロスのサリス財務相は、ロシア側との協議で成果を得ることなく帰国の途に就いた。欧州連合(EU)はキプロス支援の条件に預金課税を求めており、これが実施されればロシアの個人や企業にとって大きな痛手だ。キプロスの銀行預金総額約700億ユーロのうち半分弱は非居住者の預金で、その大半はロシア人が占めるとみられているからだ。

3月22日、キプロスの銀行預金総額の半分弱は非居住者の預金で、その大半はロシア人が占めるとみられているが、ロシアはなぜ動こうとしないのか。写真はプーチン露大統領の画像を掲げるキプロス在住のロシア人。キプロスの首都ニコシアで撮影(2013年 ロイター/Yannis Behrakis)

それなのになぜ、ロシアは動こうとしないのか。

ロシア政治を分かったように語るつもりはないが、これは彼ら一流のハイリスクかつ攻撃的な駆け引きのように映る。メドベージェフ首相を地政学的ヘッジファンドマネジャーやポーカーのプレーヤーだと考えてみれば、少しずつ謎が解けてくる。

まず最初に、ロシアがキプロス支援で後ろ向きになっていることに注目すべきだ。ユーロ圏はキプロス支援の一環として、ロシアが同国に対する25億ユーロの既存融資の返済期限を5年延長するとともに、金利を引き下げることを期待している。ロシアは今、それにさえ同意を拒んでいる。

なぜ、ロシアはここまで硬い態度を取るのか。明らかな答えは、このポーカーに参加しているのがキプロスではなく、EUであることをロシアは明確に意識しているからだ。もしロシアがこの段階でキプロスと「誠実な交渉」に入れば、EUが負担するキプロス支援金は減ることになり、結果としてEUを助けることになる。

メドベージェフ首相がモスクワでサリス財務相に話した内容は察しがつくが、キプロスの首都ニコシアでロシア人がキプロスの政治家に何を語っているかはよく分からない。ニコシアには今、「謎のロシア人」があふれているとされる。彼らがキプロス議会を買収工作するのはさほど難しいことではないだろう。

もしキプロス議会が何もしなければキプロスは崩壊必至であり、それを防ぐには政治的結束が必要だ。そして今のところ、われわれが目にしている政治的結束は、救済策への反対であって支持ではない。

英フィナンシャル・タイムズのブログ「FTアルファビル」のポール・マーフィー氏は、キプロスは二者択一に迫られていると指摘する。「ロシアのギャング金融機関を縁取る国家になるか、いかがわしい銀行の多くを閉鎖して持続可能な経済を再建し、完全に欧州に向かうかだ」。同氏は、キプロスが取るべき選択肢は「明らかだ」と語る。しかし、キプロス議会にとって答えはそれほど明白ではないだろう。

ユーロ圏にとどまろうと離脱しようと、キプロスがロシアの「従属国家」になる道を選ぶ可能性は捨てきれない。結局のところ、現在のキプロスはユーログループの「従属国家」として、結果的にこうした惨めな場所に追い込まれている。EUによる支援策を丸飲みすれば、当面は自主性を事実上捨てなくてはならないだろう。

また、プーチン大統領が、EUとの関係をゼロサムゲーム的に考えているのは想像に難くない。その観点では、キプロスがEUを離れてロシアになびけば、EUにとっては明らかな負けで、ロシアにとっては明らかな勝ちを意味する。

EUを助けることにつながるキプロス支援策でロシアが何も動かない理由はそこにある。ロシアはキプロスを欧州の手から事実上奪い取り、ユーロ圏で重要な地政学的足がかりを得るために、危険かつ攻撃的な賭けに出ているのだ。

この賭けのマイナス面は、もしキプロスがEUによる支援策を受け入れれば、多くのロシア人がキプロスの銀行に預けている多額の資金を失うかもしれないことだ。ただ、そうなったとしても、ロシアは新たに多額の資金を準備し、キプロス資産がたたき売りとなる時を辛抱強く待つのだろう。

キプロスの銀行が26日に営業を再開する前に、ロシアが現在の支援を拡大することで合意すれば、それがキプロスにとって、そしてEUにとって最善の結果であることは疑いない。

しかし、ロシアは、キプロスやEUにとっての最善を求めてはいない。彼らが考えるのはロシアにとって何がベストなのかだ。ロシアのやり方は、私には、ウォール街の売り崩しとなんら変わらないように映る。

(22日 ロイター)

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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