2022年

フランス大統領選

決選投票前の世論調査

エマニュエル・マクロン大統領とマリーヌ・ルペン氏が4月24日の決選投票に進むことが確定して以降、世論調査でのマクロン氏の優位が拡大していた。投票日の数日前に行われた最初で最後のテレビ討論会後にもわずかにリードを広げた。

マクロンとルペンの世論調査
マクロン対ルペン

1回目投票前の世論調査

マクロン氏は世論調査の期間中は常に優位を維持していた。有識者への調査では、今回の決選投票は前回2017年の時よりも接戦となる可能性が高いと見られていた。極右候補のルペン氏は世論調査では一貫して2位であった。1回目投票の1カ月前には急進左派のジャンリュック・メランション氏が3位に順位を上げた。一方、極右候補のエリック・ゼムール氏と保守派バレリー・ペクレス氏は数ポイント下げていた。

調査会社を選択
2021年9月以降の世論調査ではエマニュエル・マクロン氏が優位

候補者の顔ぶれ


エマニュエル・マクロン

エマニュエル・マクロン

共和国前進

マクロン大統領は政権2期目を目指している。元投資銀行家で、初出馬であった2017年の大統領選で勝利し、ナポレオン以来フランスで最も若い指導者となった。硬直化したフランスの政治体制を破壊し、経済成長と雇用創出を促す改革を実施した。しかし、左派の多くはマクロン氏を、日々の生活苦を無視した「金持ち大統領」だと批判している。

マリーヌ・ルペン

マリーヌ・ルペン

国民連合

ルペン氏(53)は、歴史ある極右政党「国民連合」の党首。今回で3度目の大統領選出馬となり、政治生命がかかっている。父のジャンマリー・ルペン氏が党首を務めた時代には人種差別的で排外主義と見られていた同党を「無毒化」し、右派の有権者に広くアピールしようとしてきた。しかし、政治の主流が右傾化し、同類の右派政治家がルペン氏の支持基盤に侵食してる。

ジャンリュック・メランション

ジャンリュック・メランション

不服従のフランス

メランション氏(70)は左派政党「不服従のフランス」の党首。右派に対抗する「大衆派」として立候補を表明している。社会党時代に大臣を務め、フランスはNATOから離脱すべきだとする主張は、ロシアに対して無頓着だと対立候補者に非難されている。資本規制のほか週32時間労働、年金支給開始年齢を60歳に戻すことを提唱している。ロシアのウクライナ侵攻以降、メランション氏が世論調査で支持を伸ばしている背景には、戦争と経済低迷を受け、選挙戦の論点が移民政策やアイデンティティ政治から離れていることもある。

エリック・ゼムール

エリック・ゼムール

再征服

ゼムール氏(63)は作家であり、極右ナショナリズムを掲げる論客だ。今回初めての大統領選出馬となる。「フランスはかつて偉大な国であったが急速に衰退し、イスラムと移民の脅威から守らなければならない」と述べている。アルジェリア系ユダヤ人の家庭に生まれ、戦後の人種統合政策の成功が今では崩壊していることを体現しているように自らを描いている。人種差別をあおる罪で有罪判決を受けたことがある。

バレリー・ペクレス

バレリー・ペクレス

共和党

ペクレス氏(54)は、自らを「英国のマーガレット・サッチャー元首相とドイツのアンゲラ・メルケル前首相を組み合わせたような人物であり、政治合意手腕に長け、改革者の気概を兼ね備えている」と表現する。財政・社会面で保守的であるペクレス氏は、フランスの出入国管理行政や治安の問題を抱える貧困地域の状況、膨張する債務問題を改善することができると主張する。保守派のジャック・シラク前大統領の弟子で、ニコラ・サルコジ政権下で大臣を務めた。現在、イルドフランス地域圏議会の議長を務めている。

フランス大統領選のしくみ

1回目投票で決着

1回目投票で過半数の票を獲得した候補者が当選となる。フランスの大統領選挙では1962年に2回投票制が導入されたが、1回目の投票で決着がついたことはない。

上位2候補で決選投票

1回目で過半数の票を獲得する候補者がいなければ、上位2候補での決戦投票がおこなわれる。より多くの票を獲得した候補者が勝者となる。



Richard Lough、Leigh Thomas

デザイン・開発

Dea Bankova、照井裕子

編集

Jon McClure、Alexandra Hudson、山口香子

出典

世論調査データ:NSPPolls
選挙結果データ:フランス内務省

調査方法

世論調査は多項式回帰(個別のポイント分布に沿って曲線を使用する方法)を用いて集計。

誤差は世論調査のサンプル数と前回大統領選時のフランスの有権者数から推定している。

各社世論調査では回答者に複数の候補者から選択するようになっているが、全ての候補者が選択肢に含まれていない場合がある。その場合、現時点の立候補者をもっとも多く含む選択肢を採用した。